以前からあった、ビート乗りの女子二人組がいるという噂
1991年にデビューした軽自動車ホンダ『ビート』。二人乗りのオープン2シーターで5速マニュアルのみの設定。今や「旧車」といってもいいこのクルマ。乗っているだけでも珍しいのに、一緒に楽しんでいる女子二人組が新潟市内にいたんです。
彼女たちの名は「ついんビート」。
実は私、噂は聞いていたんです。
「この前、寺泊でビートが2台停まっていたんだけど、近くにいたのは両方とも女性だったんですよ。ヤングさん、知ってます?」。
「ビートって5速マニュアルしかない軽のオープンカーですよ。そんなマニアックなクルマで女子がつるんで走るなんて…。たまたま女の子がビートの脇を通っただけじゃないですかね?」
…なんて感じで。
もし、いつか会える日がきたら取材させてもらおう!と思っていたら、ついに出会うことができたんです。「どこで取材しましょうか?」と訪ねたら、なんとこのサイトでもおなじみのショッブ「エスエスワークス」さんの名前が挙がりました。
(ムムッ! この子たちはファッション感覚ではなく、ガチでビート乗りじゃないか!?)
ニュースや新聞などで「若者のクルマ離れ」という、私が嫌いなフレーズをよく見聞きする昨今、なんとすばらしい女子たちだ!と感心しました。なんとエスエスワークスの常連さんだったのです。
当日、二人はこの夏ハイブ長岡で開催された「エンジョイホンダ」で購入した、『ビート』がデザインされたお揃いのTシャツで取材に応じてくれました。
なぜ『ビート』のオーナーになったの?
まずはお二人の簡単な紹介から。
平成5年式の赤い『ビート』のオーナーが“とら”さん。平成3年式の黄色い『ビート』のオーナーが星野さんです。
二人の出会いは『ビート』購入後のこと。ビートオーナーになるきっかけは、まったく異なるものでした。
赤い『ビート』のオーナー・とらさんは、祖父が古い『セリカ』に乗っていたことも影響し、クルマを所有していない頃から旧車イベントを見に行くほどの旧車好き。マニュアル車が多い旧車への憧れもあり、最初はAT限定免許だったが限定解除してMT免許を取得した。
いつかマニュアル車に乗ってみたいと思っていたとき、当時の職場(カーディーラー)に事故をきっかけに前オーナーが手放した『ビート』がやってきた。
「その『ビート』が“まだ走れるよ”って言っている気がしたんです」
そんな偶然の出会いから購入を決意。まるで漫画「湾岸ミッドナイト」のアキオと『S30Z』の出会いを彷彿させますね。それまで『ビート』を探していたわけでもなく、「かわいいクルマだな、直してあげたいな」と思ったそうです。『ビート』のデザインが母性をくすぐったのでしょうか。
ちなみに憧れのクルマを尋ねたら、アメリカの特撮番組『ナイトライダー』に出てきた「ナイト2000」こと『トランザム』…って、どっちやねーん!! サイズもミッションも全然違うし(笑)。思わず渡辺徹さんばりの関西弁ツッコミ(栃木生まれの茨城育ち)をしてしまうほど意外な車名でびっくり。というより、やっぱり古いクルマが好きなんですね。
一方、黄色『ビート』の星野さんは、昔から家族とサーキットに足を運んだり、F1レースが好きだったり、幼少の頃から自然とクルマ好きになりやすい環境で育ったようです。
でもってある時、新潟市近郊のとあるショップで『ビート』を発見し、意外にお手頃だったので購入に向けて心が踊りだし、その後、別のショップで見つけた『ビート』を購入。
「お店のすぐ近くのコンビニで●万円を引き落としてバーっと買いに行きました」
そんなわけで二人には無事に(?)『ビート』オーナーに。ところで二人にとって、このクルマの魅力は何なのでしょうか?
「デザインと一体感、マニュアル車であること」(星野さん)
「おしりのデザイン、サイズ、一体感、マニュアル車であること、ほどよく旧車であること」(とらさん)
まずデザインを挙げる点は女子らしいですよね。やっぱり見た目は大切です。
二人の出会いは突然に…。きっかけはもちろん『ビート』
『ビート』を買うきっかけは違うが、購入時期は二人とも偶然同じ2015年9月。
そんな二人の出会いは、オーナー同士の集まりがきっかけだった。共通の知り合いから「ほかにも女の子がいるよ」という紹介で出会うことに。コンタクトをとったみら住所を聞いてびっくり! わりと近所に住んでいた。そんなわけで「じゃあ、すぐ会おうよ」となりました。
そして新潟市江南区の某レストランで集合した際、乗ってきたクルマは『ビート』ではなく、二人ともセカンドカーのホンダ『フィット』。まずはその偶然の一致に驚いたが、会話してみたらとにかく同じことが多かった。
・『ビート』の購入時期
・セカンドカーは『フィット』
・住んでいる地域
・AT限定免許の限定解除時期
・血液型 …などなど。
さまざまな部分がシンクロしていて本人たちも驚いた。前世というものが本当にあるのなら、二人は双子か姉妹じゃないかと思っちゃうほど。今は週1回くらいのペースで会うが、約束したわけでもないのにエスエスワークスに来るとバッタリ! ということも多い。
普段二人で会う日は買い物にいったり、ごはんを食べたり、ドライブしたり、サーキットに行ったり。…そう、二人は『ビート』でサーキットを走っているんです!
2016年春から間瀬サーキットに通うようになり、1〜2ヵ月に1回くらいのペースで走っている。もちろん「ヒール&トゥ」だってできちゃいます。取材中、まさか20代の女性たちから「ヒール&トゥ」というセリフがでてくるとは思わなかった(笑)。
彼女たちの仕様を見れば、その本気度が分かります。※以下、2017年7月末現在の仕様
【とらビート 車両スペック】
シート:BRIDE ZETAⅢ マイスターショップ限定カラー
シートベルト:CUSCO 6点式レーシングハーネス 競技用
ステアリング:HONDA純正MOMO
補強パーツ:CUSCO フロントタワーバー
ブレーキパッド:DIXCEL ES タイプ
ラジエータ:純正改 カロリーアップラジエーター
ブレーキライン:ランマックス
クラッチライン:ランマックス
サスペンション:HONDA Moduloスポーツサスペンション
エンジンオイル:elfエヴォリューション900FT 0w-40
マフラー:無限 スポーツマフラー
ホイール:スパルコ
その他:グレッディ ネオジムマグドレ
【星野ビート 車両スペック】
エアロ:TMガレージ ダッグテール
ステアリング:MOMO ドリフティング
メーター:auto gauge
サスペンション:RS☆R ダウンサス ti2000
マフラー:ハーフウェイ T10
タイヤ:ダンロップ DIREZZA ZⅡ
ホイール:メーカー不明の自家塗装
コンピュータ:ビートガレージ スポコン
エアクリーナー:零1000
その他:メーカー不明の55mmファンネル
今後、ドラテクの向上と共にさらに車両も進化していくが、それは彼女たちの走りの先生に相談してタイミングを見計らいながら。なので、例えば現在とらさんは敢えて普通のラジアルタイヤを装着している。必要な時期がきたら交換するようで、きっとタイヤの性能に頼った走りをしないためだろう。
彼女たちにとってサーキット走行の魅力は、「気持ちいい」「爽快感」、そして「公道で出せないスピードが出せること」。だからこそ公道では秩序を守り、安全運転に心掛けているという。
スポーツカーが好きな若い人たちを増やしたい!
サーキットも走るが、常に車両をキレイにしていたいというとらさん。自宅のガレージで『ビート』の横に寝たこともあるというから、その愛の深さはすごいですよね。
また、星野さんは自分でできることは、なるべく自分でやるという。「へ〜」なんて思っていたけど、その内容がなかなかすごい。オイル交換やバッテリー交換など初級的なクルマいじりはもちろん、『ビート』の弱点であるサイドシルのサビも自分で直したり、コンピュータも自分で脱着するのだとか。さすが、ご両親(ちなみに私とほぼ同じ歳)がクルマが好きという環境で育っただけあります。
二人のビート愛の深さや本気度にはホント脱帽しました。そんな「ついんビート」のお二人ですが、とらさんが最後に口にした言葉が印象的でした。
「スポーツカーに乗ってみたいと思う人を増やしたいんです。私たちが少しでもその力になれれば」
「かっこいいと思うクルマに出会ったら、諦めないで手にしてほしいです」
「ビート愛」だけではなく、もっと広い視野で、スポーツカーやカーライフ文化を意識している二人。当サイトの“ローカルカーライフをもっと楽しくしたいという”コンセプトに通じるところがあります。
というわけで、今後「Car&Life Niigata」でコラムを書いてもらおうかな〜と本気で考えていたりします。