あの作家・歌人が愛した新潟の温泉宿【川端康成・与謝野晶子・吉川英治】

温泉宿の選び方っていろいろありますよね。露天風呂や料理、景色、宿周辺の温泉街の充実ぶりなど…。

例えば「作家・歌人が訪れたことがある温泉宿」というのもそのひとつでは。実は新潟県内にもそんな温泉宿があるんです。

誰もが知ってるあの物語や歌は、 作家が滞在した温泉宿で生み出したものも多いとか。 名作が生まれた場所で、その時の情景に思いを馳せながら過ごしてみてはいかがでしょうか?

※月刊にいがた1月号の「日帰り温泉特集〈あの人が愛した温泉宿〉」をもとに作成。

 

雪國の宿 高半(湯沢町)×川端康成

名作が生まれた当時を今に伝える

県内屈指の豪雪地・湯沢を舞台に描かれた『雪国』は、日本文学を代表する長編小説のひとつ。あるきっかけで湯沢を訪れた主人公・島村と、地元の芸者・駒子との恋愛模様を描いている。作者である川端康成が実際にこの地に滞在したのは、昭和9年から12年までの3年間。彼が執筆を行なっていた「かすみの間」は、当時の状態のまま保存されており、見学をすることができる。加えて、川端康成直筆の書や写真などゆかりの品々を展示したコーナー、湯沢で撮影された『雪国』の映画を放映する鑑賞室なども設けている。900年余りの歴史を持つ、源泉かけ流しの効能豊かな湯と『雪国』の世界にどっぷり浸かろう。

↑(上2枚)川端氏と同じ景色を見ていると思うと不思議な感覚に


↑作品展示室には『雪国』以外に、高半ゆかりの作家たちの作品が飾られている

↑(上3枚)さまざまな国で翻訳された『雪国』や映画のポスターなど

↑文学の世界に浸れる図書ラウンジも利用して

↑映画の撮影時に川端氏が訪れた際の写真

【川端康成】
かわばたやすなり(1899年〜1972年)。大阪府出身。東京帝国大学在学時に、芥川賞などを設定した小説家・菊池寛に認められ頭角を現した。その後、文芸の一流派である「新感覚派」の作家として注目を浴び、日本人初のノーベル文学賞を受賞。代表作は『伊豆の踊子』、『雪国』、『眠れる美女』など

 

雪國の宿 高半(ゆきぐにのやど たかはん)

下写真(1枚目)は婦人大浴場のみに設けられた露天風呂。もとは内湯だったものを景観が楽しめるよう改装した。冬の雪景色が見事。お湯はぬるめなので、じっくり時間をかけて浸かれる。温泉成分をしっかり体が吸収し、お肌がスベスベに!


●南魚沼郡湯沢町湯沢923
tel.025-784-3333
日帰り入浴料金:大人1,000円、3歳以上小学生以下500円
入浴可能時間:13:00~17:00
無休
駐車場30台
http://www.takahan.co.jp

 

香嶽楼(妙高市)×与謝野晶子

モダンな空間と上質な湯に癒される

高原の澄んだ空気のなかで静かに、穏やかに時間が流れる香嶽楼。明治時代、小さな旅籠屋ばかりだったという赤倉で、初めての旅館として営業を始める。その後明治32年に訪れた小説家・尾崎紅葉が宿を絶賛したことでその名が全国に広まった。数々の文人が足を運ぶようになるなか、香嶽楼に訪れたのが与謝野晶子と夫の鉄幹だ。赤倉温泉の空気、温泉、そしてこの宿を愛した彼らは4度にわたりここへ足を運び、赤倉温泉と香嶽楼に関する歌を残している。与謝野晶子はこの宿で何を思いながら歌を残したのか…。当時の情景に思いを馳せながら過ごして。

↑地下1階の隠れ家のような図書室。宿でセレクトする本のほかに、お客が置いていく本もあるんだとか

↑(上2枚)与謝野夫妻が残した歌や書籍は、館主に声をかければ閲覧可能

↑館主の村山さん。歌が大切に保管されている箱には「与謝野 寛 晶子 短歌」の文字が(寛は鉄幹の本名)

【与謝野晶子】
よさのあきこ(1878年〜1942年)。歌人。歌集『みだれ髪』など、ロマン主義文学の中心的人物として多くの作品を残している香嶽楼

 

香嶽楼(こうがくろう)

妙高山に湧く源泉をそのままかけ流し。ぬるめのお湯はじっくり長時間浸かるのがおすすめ。湯上がりはぽかぽかと温かく、湯冷めしにくい

●妙高市大字赤倉115
tel.0255-87-2036
日帰り入浴料金:大人800円、小学生400円、幼児無料
入浴可能時間:15:00~19:00(入館は18:30まで)
無休
駐車場20台
http://www.myoko-kougakuro.jp/

 

逆巻温泉 川津屋(津南町)×吉川英治

人里から遠く離れた「平家の谷」へ

『新・平家物語』の執筆活動の場に吉川英治が選んだのは、平家の落人伝説が残る秋山郷の宿。周りに商店はなく、渓谷に響くのは自然の音だけ。昭和28年初夏に約1ヵ月間滞在し、期間中は編集者と川津屋を貸し切っていたという。執筆活動以外は3代目当主と囲碁に興じたり、温泉に入ったりと悠々と過ごした。温泉は岩の切れ目から自噴する源泉をかけ流しで使用。疲労回復効果を持つラジウム硫黄泉で、「医者いらずの湯」として長年受け継がれてきた。吉川が宿泊した部屋は改装され当時の面影はないが、上写真の文机などゆかりの品や昔とほぼ変わらない大自然の景観が、訪れたファンを楽しませている。

↑(上2枚)実際に滞在した2階の部屋。景色も中津川のせせらぎもほぼ昔のまま


↑現在の4代目当主・吉野さんが子供のころ吉川からもらったつけペン

↑吉川英治が近隣を散歩していた様子。ほか、直筆の書を残した色紙も

【吉川英治】
よしかわえいじ(1892年〜1962年)。生前は長編約80編、短編約180編もの小説を執筆。代表作は『新・平家物語』、『三国志』

 

逆巻温泉 川津屋(さかさまきおんせん かわつや)

まるで洞窟のような珍しい造りの「めいそうの湯」。湯船から数メートルの場所に湯本があり、鮮度抜群の湯が惜しみなく注がれている。

●中魚沼郡津南町秋山郷
tel.025-767-2001
日帰り入浴料金:大人800円、子供400円(当日までに要予約)
入浴可能時間:10:00~15:00/18:00~20:00
不定休
駐車場20台
http://www.tsunan.com/kawatsuya

by
Car&Life Niigataの編集長。兼、新潟の情報誌『月刊にいがた』の編集部員。広告営業をメインに、カーライフ誌面「このクルマ このシーン」などを担当。編集部イチのクルマ好き。入社以来24年、どんなに歳を重ねようがあだ名は「ヤング」。「新潟版図柄入りナンバープレート検討委員会」の委員を務めた。
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