新型コロナウイルス感染症の合併症によって、症状が異なります。肺炎を起こすと、発熱や呼吸が苦しい、たくさんの咳が出る、心筋炎・心膜炎を起こすと、胸が痛い、胸が苦しいなどの症状が出ることがあります。入院するだけでなく、呼吸を補助する機械を着けて集中治療室で治療することもあります。
日本小児科学会のデータベースによれば、集中治療室での治療が必要だった症例は全体の1.2%で、また心筋炎・心膜炎の発症は0.2%です。
慢性の呼吸器疾患、心臓疾患、神経疾患、腎疾患、肝疾患、糖尿病などの基礎疾患があるお子さんや、病気や治療によって免疫抑制状態にあるお子さんなどは新型コロナウイルスに感染した場合に重症化しやすいと考えられています。こちらについてはこの質問「特にどのような子どもにワクチン接種が勧められますか?」もご参照ください。
子どもの新型コロナウイルス感染症発症後に症状が長く続くものについて調べた研究では、だるさや呼吸苦、筋肉痛、睡眠障害、胸痛、頭痛、脱⽑、腹痛などが報告され、複数の症状が続くお子さんが多いです。実際に新型コロナウイルス感染症にかかってどのくらいの頻度で後遺症を残すかについては、4%~66%とばらつきが大きいです。
なお、日本におけるまとまったデータはなく、どの程度の頻度かは不明です。
小児においても中等症や重症例が確認されており、特に基礎疾患を有する等、重症化するリスクが高い小児には接種の機会を提供することが望ましいとされています。また、今後様々な変異株が流行することも想定されるため、小児を対象にした新型コロナワクチンの接種を実施しています。
国内ではファイザー製の小児用ワクチンが2022年1月末に5~11歳に対して承認されています。2回接種を基本とし、1回目の接種から3週間あけて2回目を接種します。2回目の接種前に12歳の誕生日を迎えた場合も、5~11歳用を接種します。
なお、12歳以上の方を対象とした同社のワクチンには30μgのmRNA(メッセンジャーRNA)が含まれていますが、5~11歳用ではその1/3の10μgとなっています。また注射量も12歳以上は0.3mLですが、5~11歳は0.2mLとなっています。
国内では新型コロナワクチンと他のワクチンの接種は2週間以上あけることになっています。海外では他のワクチンの同時接種が認められていますが、国内では同時接種はしない方針となっています。
米国で5~11歳を対象に実施された臨床試験の結果によると、5~11歳でも、16~25歳と同程度に抗体価が上昇し、有効性が評価できるとされています。また、中和抗体価の確認後に行われた解析において、新型コロナウイルスに感染歴の無い人を対象に、2回目接種後7日以降の発症予防効果を確認したところ、90.7%であったことが報告されています。
ただし、これらのデータはオミクロン株が流行する前のものであることに留意する必要があります。オミクロン株に対しては、現時点で得られている米国での研究結果によると、ファイザー社のワクチンにおける感染予防効果は、5~11歳では2回接種後14~82日後で31%、12~15歳では2回接種後14~149日後で59%という報告があり、一定の効果が期待されています。また、成人では、オミクロン株に対する発症予防効果や入院予防効果等が確認されており、5~11歳に対しても、同様の効果が期待されています。
慢性の呼吸器疾患、先天性の心疾患、慢性の神経疾患、糖尿病などの内分泌疾患、代謝疾患、先天性や化学療法や移植に伴う免疫不全症、染色体異常、肥満などの基礎疾患については新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高いと考えられます。これらの病気をもつお子さんやこれらのお子さんとよく接するお子さんには特にワクチン接種が推奨されます。
詳しくはかかりつけ医にご相談ください。
接種可能です。新型コロナワクチンを接種できない基礎疾患は今のところ、知られていません。熱性けいれんは、6歳くらいまで起こることがあるので、接種後の発熱でけいれんを起こすことがあるかもしれません。
アレルギーについては、新型コロナワクチン接種ですでに重度のアレルギー症状を生じたことがある場合を除き、他のアレルギーがあっても新型コロナワクチンの接種は可能です。(例えば、1つの食材に重いアレルギーがあっても、他の食材に対してアレルギー症状を起こすとは限らないのと同様に、何かにアレルギーがあっても新型コロナワクチンに対してアレルギー症状が出るわけではありません)。
新型コロナワクチンの接種を受けることは強制ではありません。
ワクチンの予防の効果と副反応のリスクの双方について理解した上で、自らの意思で接種を受けていただくものです。接種するメリット(期待できること)とデメリット(副反応等)を考慮いただき、接種を受けるご本人(お子さま)と保護者の方でよく相談のうえ、接種を受けるかどうかご判断ください。
学校や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていないことを理由に差別的な対応をすることのないようお願いします。
症状があるけれども、普段と様子が大きく変わりない場合には自宅で安静にしていてください。受診するかどうか悩む場合は、かかりつけ医にご相談ください。
また、以前にそのお子さんに使用したことがある解熱鎮痛薬については、使っていただいて問題ありません。ただし、大人用の解熱鎮痛薬を子どもに使うのは避けてください。また、症状が出る前から解熱鎮痛薬を使うことはおすすめしません。
ファイザー社のワクチンは、5~11歳の接種においても、12歳以上の方と同様、接種部位の痛みや倦怠感、頭痛、発熱等、様々な症状が臨床試験で確認されていますが、殆どが軽度又は中等度であり回復していること、現時点で得られている情報からは、安全性に重大な懸念は認められていないと判断されています。
また、1回目接種時、2回目接種時いずれも、症状がみられたのは、局所反応が接種後1~2日、持続期間(中央値)は1~2日であり、全身反応が接種後2~4日、持続期間(中央値)は1~2日と報告されています。
(注):接種後7日間にみられた様々な症状(1回目または2回目のいずれか)
米国では、5~11歳の子どもに対して、すでに870万回以上の新型コロナワクチン接種が実施されています。その報告によると、計11例の報告があり、5~11歳のワクチン接種後の心筋炎の発症頻度は12~15歳と比べて少なかったです。
子どもへのワクチン接種は、子ども自身を守ること、家族や友達など周囲の人々への感染伝播を減らすこと、園・学校などでの継続した教育の機会を確保することが期待されます。
インフルエンザや水痘なども大半は軽症で済みますが、⼀部は重症化し、その重症化を予防する観点からもすでに日本で多くの子どもたちがワクチン接種しています。新型コロナウイルス感染症も同様で、欧米よりも少ないながらも日本国内で重症例が実際に報告されていること、今後新しい変異ウイルスが出現し、子どもにより重い症状を起こす可能性がないとはいえないこと、感染力が強い変異ウイルスが出現し続けていることに注意が必要です。
現在、ワクチン接種だけが、子どもたちを新型コロナウイルスから積極的に守る唯⼀の有効な手段です。
新型コロナウイルスにすでに感染し、新型コロナウイルスに対する抗体をもっていても、再度新型コロナウイルスに感染するリスクはあります。大人の研究では、すでに感染したことがある人に新型コロナワクチンを接種することで、再感染のリスクを減らすことができると報告されています。
お子さんにおいても同様の効果が期待されるため、すでに感染したことがあるお子さんでも新型コロナワクチン接種で得られるメリットはあると考えられます。
ワクチンを接種しないということは、⼀番安全な選択をしたとは⾔えません。⼀定の頻度で感染した際に、どの程度のリスクかについては現時点では予測できませんが、ある程度のリスクを引き受けることになります。
万が⼀、感染した場合、子どもの成⻑にとって重要な園・学校などの社会生活に支障が出ること、子どもの重症化は稀であっても感染力の強い変異ウイルスの出現によって感染者数全体が増加すると子どもの重症者数も増加する可能性があること、今後新しい変異ウイルスが出現するか予測困難であることなどがデメリットとしてあげられます。
◎接種券(1・2回目用)
◎本人確認書類 健康保険証、マイナンバーカードなど
◎予診票(1枚) あらかじめ記入してお持ちください。
○未就学のお子さまは、接種履歴の確認のため、母子健康手帳をお持ちください。
※同時または前後2週間は、原則、他のワクチンを受けることはできません。
※接種には保護者の同意と立ち合いが必要です。お子さまとも話し合い、納得したうえで、接種を受けるかどうかご判断ください。
※接種の緊張をやわらげるため、お子さまが普段お使いのおもちゃや絵本などがあればお持ちいただいて構いません。